細胞・遺伝ノート ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 細胞ノート [細胞]cell ・ロバート・フックが1665年に初めて観察 ・ヒトの体は約60兆個の細胞からできている ・ヒトには約200種類の細胞がある ・指紋の溝と溝の間に約20個の細胞がある(一辺が約20μm) ・人の細胞は毎日3000億個が死に、同数の細胞が新生している ・卵の黄身は一つの大きな細胞 [核]nucleus ・直径5μm ・ヒトの核には染色体が46本入っている(生殖細胞は23本) 相同染色体22ペア(父から22本、母から22本)+性染色体1ペア 原核生物(Prokaryote):核を持たない 細菌(バクテリア)、古細菌 真核生物(Eukaryote):核を持つ 細菌(バクテリア)、古細菌以外のすべて [核酸]nucleic acid ・ヌクレオチド(後述)のがつながったもの ・糖にはリボース、デオキシリボースの2種類がある [ヌクレオチド] 次の3つがつながったもの ①リン酸基(PO4) ②五単糖(リボース、デオキシリボース) リボース → "デオキシリボ核酸"(DNA,後述) deoxy-:"酸素がない" デオキシリボース → "リボ核酸"(RNA) ③[ヌクレオチド塩基] A:[アデニン](C5H5N5)adenine [ˈædəniːn] T:[チミン](C5H6N2O2)thymine [ˈθaɪmiːn] (DNAだけ) C:[シトシン](C4H5N3O)cytosine [ˈsaɪtəʊsiːn] G:[グアニン](C5H5N5O)guanine [ˈɡwɑːniːn] U:[ウラシル]uracil[ˈjʊərəsɪl] (RNAだけ) ★A-Tは水素結合が2つ、C-Gには水素結合が3つできる A-T,C-G="at cage" 遺伝情報の保管(DNA,RNA)やエネルギーの貯蔵転移(ATP)をになう ATP(Adenosine Triphosphate,アデノシン三リン酸) :三リン酸(H5P3O10) + リボース + アデニン [DNA][デオキシリボ核酸]Deoxyribo Nucleic Acid [diˌɑːksiˌraɪboʊ] ・主にタンパク質の設計図(アミノ酸配列を指示) ・体の設計図、細胞の活動の指示書 ・ヒトのDNAの塩基配列は2003年に解読完了(32億の塩基対) ・チンパンジーとヒトのDNA上の差異は約1% ・4種類のヌクレオチドがつながったひも(ヌクレオチド塩基:A,T,C,G="at cage") [染色体]chromosome [ˈkroʊməzoʊm] ・DNAがヒストンに巻きついて凝縮したもので、細胞が分裂する前に棒状に寄り集まった形状(分裂前だけに観察される) ・ヒトは46本の染色体を持つ(ウマ:64本、トウモロコシ:20本) 相同染色体22ペア(父から22本、母から22本)+性染色体1ペア ・酢酸オルセイン液、酢酸カーミン液で赤く染色 ・同じ長さ、セントロメアの位置、模様が同じものが46本中に2本ずつある →ペアごとに並べると22セットできる(相同染色体) →このペアはそれぞれ父親と母親からもらったもの →残りの1セット(2本)は性染色体(男性:XY,女性:XX) ※性染色体がX1本の人が、2500人に一人いる(ターナー症候群) ・細胞分裂前にコピーされ、"X字"の形状になる(染色分体×2本) →分裂前の核は2倍量のDNAを含む [遺伝子]gene DNA分子の中で、タンパク質をつくるための情報(塩基配列)を持っている部分(伊藤) DNAの2.5%しかない [細胞壁]cell wall ・原生生物、細菌、植物には、たいてい細胞壁がある ・植物の細胞壁は主にセルロース(C6-H10-O5)nからできている ・ペニシリンは細胞壁の合成を阻害する(細菌には有害だが、動物には無害) ・反芻動物(牛,羊など)や昆虫は、セルラーゼを生産する微生物(菌類・原生生物)を消化器官の中に飼っている ・カタツムリやシロアリはセルラーゼを生産し、自前でセルロースを分解している [細胞膜]plasma membrane,plasmalemma, cell membrane リン脂質二重層lipid bilayer 親水性の"頭"(リン酸基)と疎水性の"尾"(2本の脂肪酸)を持つ脂質分子の二重構造 頭部分が外を向き、尾(脂肪酸)同士がくっつくように配列 [リン脂質]phospholipid [ホスファチジルコリン]phospatidylcholine,PC (=レシチン) グリセロール+脂肪酸×2 + リン酸-コリン [ホスファチジルエタノールアミン]phosphatidylethanolamine,PE (=セファリン) グリセロール+脂肪酸×2 + リン酸-エタノールアミン [液胞]vacuole ・水が入っている→形・硬さの維持(でかい) ・酵素の格納 ・老廃物の格納 ・栄養分子の貯蔵(種子) [細胞質]cytoplasm 核をのぞく真核細胞の内容物すべて(色素体、ミトコンドリア、ゴルジ体、小胞体) 細胞質ゾルcotosolを指すこともある [サイトソル]cytosol 細胞の内容物で、細胞小器官をのぞくもの [ミトコンドリア]mitochondrion [ˌmaɪt̬əˈkɑːndriən] 長さ:1μm 肝細胞中の数:2000個(容積:細胞の24%) [リボソーム]ribosome [ˈraɪbəsoʊm] タンパク質の合成 mRNAからコドンを読み取り、mRNAに従ってアミノ酸がつながれる ストレプトマイシンは結核菌のリボソームを変形させることで、正常なタンパク質の合成を阻害する [葉緑体]chloroplast [ˈklɔːrəplæst] [ポリメラーゼ] [ˈpɑːləməreɪz] ----------------------------- [細胞分裂]cytokinesis G1期(Gap1): DNA合成の準備(タンパク質の合成) S期(Synthesis): DNAを倍加させる 染色分体(2本の同等の糸が側面を接して並んだ状態の染色体)の形成 46本が46*2の状態になっている G2期(Gap2): 細胞分裂の準備 M期(分裂期,Mitosis): 哺乳類では約1時間 ・核内の、46本の染色体がコピーされ46対になる →"X字"の形状になる(中央で結合された姉妹染色分体) →顕微鏡で観察できるようになる ・核膜が崩壊する ・細胞の中央に整列する ・染色体が両極から引っ張られて分離する("X"が分離する) ・それぞれの染色体の周りに核膜が形成される 植物:真ん中に仕切りが形成され、細胞壁になる 動物:真ん中が絞られてち切れ、 [減数分裂]meiosis ⇔ meitosis 生殖細胞(精子・卵)をつくるための細胞分裂 分裂のさいに、染色体の数が半分(23本)になる分裂 46本(diploid,2倍体,2n) → 23本(haploid,1倍体,n) 第一分裂 相同染色体同士が接近して対合(たいごう)する (二価染色体:相同染色体2つ、染色分体4つ) →赤道面に整列 ----------------------------- [有性生殖]sexual reproduction 配偶子の合体による生殖法 セキツイ動物のほとんどは有性生殖をする 長所: 新個体は新しい遺伝子の組み合わせになり、環境の変化に強い →寿命が伸び、進化の速度が上がった 短所: 生殖にパートナーが必要であり、生殖の効率が悪い(パートナー探しにエネルギーと時間が使われる) [生殖細胞]germ cell ⇔[体細胞]somatic cell 子孫をつくるための細胞(卵、精子などの配偶子) 染色体は23本(1倍体) [配偶子]gamete [ˈɡæmiːt] 合体して新しい個体のもとをつくる単細胞 配偶子をつくる本体を配偶体という ①同形配偶子(アオミドロ、クラミドモナス) ②異形配偶子(アオサ) 大:雌性配偶子、小:雄性配偶子 ③卵と精子 雌雄の各配偶子の違いが顕著になったもの 卵:雌性配偶子がさらに大型化し、栄養が蓄えられ運動性がなくなったもの 精子:雄性配偶子がさらに小型化し、鞭毛が発達して運動性が向上したもの ・精細胞(sperm cells)、卵細胞(egg cells, ovum) ・親細胞の遺伝情報の半分(23の染色体)だけを含む細胞(減数分裂によってつくられる) ・ふたつの配偶子がくっついて(受精)、接合子(zygote)を形成する [精子]sperm ・60μm(全長) ・染色体は23本しかない(1倍体) ・染色体・鞭毛1本・ミトコンドリアを1個しかもたない ・1秒間に1000個生産される ・1回の射精で3億~5億個が放たれる ・ヒトの性は精子が決める(男性:XY,女性:XX) 精子がX染色体を持つ→受精卵はXX(女性) 精子がY染色体を持つ→受精卵はXY(男性) [卵]egg ・140μm(人体で最大の細胞) ・染色体は23本しかない(1倍体) ・誕生時に100万~200万個を持ち、生涯で約500個が排卵される ・受精後の発生に必要な養分を持っているために大きい →精子を待つだけ [受精]fertilization (ヒトの場合) 23本しか染色体を持たない精子(一倍体)、卵(一倍体)が融合し 46本の染色体を形成する [受精卵] ・46本の染色体を持つ(2倍体) 23本は雄から、23本は雌から ・染色体以外は雌から受け継いだもの ・最初の24時間で初めての細胞分裂 →その後は半日毎に倍々になる 1ヶ月:エラがあり、眼も顔の横についており、尾もある(魚類の時期) [発生]development 受精卵から成体になるまでの形態変化の過程 受精卵 →胚embryo(発生の初期段階) 受精直後は急速に細胞分裂をするが、細胞の成長をともなわないため、細胞の数は増えるが、胚そのものの大きさはあまり変化せず、それぞれの細胞の大きさは分割により小さくなる。 この初期段階の胚は中空であり、[胞胚]とよばれる。 ※ヒトの卵は輸卵管中で受精し、子宮に移動する1週間に4回の分裂(16細胞)。 [胚]embryo ●動物の胚 受精から出生までの間 ※ヒトの場合、受精から8週以降の胚を[胎児]と呼ぶ ●植物の胚 接合子zygoteから発芽までの間 種子植物では、子葉cotyledon, 胚軸hypocotyl, 幼根radicleに分かれていく [無性生殖]asexual reproductin ・親とまったく同じ遺伝子をDNAをもつ(クローン) ・多くの生殖は無性生殖 ・変化の乏しい環境に多い ・変化の乏しい環境では効率のよい生殖方法 長所: 異性を見つける必要がなく、単独でどんどん増殖できる 短所: 環境の変化に弱い ------------- ★動物の無性生殖(LIFE.U43) ①[出芽]budding 親の細胞や個体の一部が膨らんで新個体が離脱する生殖法 exカイメン、ヒドラ(ときどき雄と雌の有性生殖を行う ②[再生]regeneration ex echinoderms, sea stars, プラナリア、 ③[単為生殖]parthenogenesis 無精卵からの発生 多くの節足動物、一部の両生類、爬虫類 ミジンコ ------------- ★植物の無性生殖(LIFE.U38) 多くの植物は無性生殖/有性生殖の両方を行う (植物は進化の過程で無性生殖を残した) ①[栄養繁殖]vegetative reproduction 生殖器官(花)ではなく、栄養器官(vegetative organ根・茎・葉)によって生殖する 植物の栄養器官の一部から新しい体が生まれて生殖する 栄養繁殖だけで繁殖する植物は少数で、大半は種子も同時につくる ※種子には休眠性というメリットがある ※有性生殖には多様性というメリットがある ex イチゴ 地表に匍匐茎stolon,runnerを水平に伸ばす タケ 根茎rhizomeで殖える ジャガイモ 塊茎(かいけい)tuberで殖える サツマイモ 塊根(かいこん)で殖える タマネギ、ユリ 球根bulb(ほとんどが葉、小さい茎、短い根) クロッカス 球茎corm デンドロビウムの一種 枝がち切れて新しい株が育つ シコロベンケイ 葉のへりに小さな芽ができてこぼれ落ちる ヤマノイモ 茎の途中に小さなイモ(むかご)ができ、地面に落ちて新しい株が育つ ノビル つぼみが花にならずにむかごになり、地面に落ちて新しい株が育つ ヒガンバナ りん茎 種子からは発芽しても枯れる ラン 成長点培養(新芽の成長点を無菌室の試験管で培養) ★人為的な栄養生殖 挿し木 接ぎ木grafting ②[アポミクシス]apomixis 2倍体の配偶子 セイヨウタンポポ(クローン) ブラックベリー ------------- その他の生物の無性生殖 [分裂]fission exゾウリムシ、ケイソウ、イソギンチャク、ウミユリ ・Fragmentation ------------------------------------------------------------------------- すべての生物は4種類の巨大分子からできている ①炭水化物carbohydrates < ②脂質lipids <脂肪酸fatty acids lipids ∈fats, phospholipids, steroids ③タンパク質 <アミノ酸 ④核酸nucleic acid <ヌクレオチドnucleotides ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 遺伝 ★背の高いエンドウと背の低いエンドウをかけ合わせると、その子ども世代のエンドウはどうなるか →中間の背の高さにはならない ★シワのあるエンドウ、シワのないエンドウをかけ合わせる →子の世代は、中間のエンドウは生まれず、すべてシワなしエンドウ →孫の世代は、シワなし:シワあり=4:1 ★両親の目が茶色で、子供の目が青くなることはあるか →青眼は劣性なのでありうる ------------------------------------------------------------------------- 遺伝子∈DNA∈染色体 (「A∈B」:AはBに属する) ★生物は両親から受け継いだ遺伝子を2つ持っている。形質として表れるのはそのうちのひとつだけなので、「形質として表れている遺伝子」と「形質として表れていない遺伝子」を持っている。 ★生殖の際は、自分の持っている2つの遺伝子のうち、どちらかひとつを配偶子(gamete,精子・卵)に受け継ぐ(減数分裂meiosis)。これはランダムに選ばれるので、親の形質として表れていない方の遺伝子が子供に引き継がれることがある。また子供の形質と両親の形質が一致しないこともある。 例1.----------------------------- 純系でないムラサキ色の花を咲かせるエンドウ豆同士をかけあわせる場合 親:ムラサキ(ム・白)×(ム・白) 子:ムラサキ((ム・白),(白・ム),(ム・ム)) or 白((白・白)) (3:1の比) →ムラサキの両親から、白い花の子が生れる(形質が一致していない)。 [形質]character ・後天的ではなく、遺伝子によって決まる性質 ・花の色、豆のしわ、毛の色、目の色、肌の色など ・鍛えた体、削った歯、訓練によって器用になった手は、遺伝的性質ではなく後天的性質なので形質ではない([獲得形質]と呼ばれる) ・単一の遺伝子ではなく、複合的に発現するものもある →独立の法則が成り立たない [優性]dominant ・必ず形質として表れる遺伝子 ・大文字のアルファベットで遺伝子型(genotype)を表す メンデルの実験 丸い種 黄色い種 紫の花 膨らんだサヤ 緑のサヤ 側生(花のつき方) 背が高い茎 [劣性]recessive ・優性の遺伝子と対になったときに形質として表れない ・劣性遺伝子が2つ揃ったとき(有性遺伝子がないとき)に形質として表れる ・小文字のアルファベットで遺伝子型(genotype)を表す しわのある種 緑の種 白い花 縮んだサヤ 黄色いサヤ 頂生(花のつき方) 背が低い茎 例1.----------------------------- ※ムラサキ色が優性の場合 ムラサキ色のエンドウの花 →(ム・白),(ム・ム) 白い色のエンドウの花 → (白・白) ※目が黒いのが優性の場合 黒目 → (黒,黒), (黒,青) 青め → (青,青) ----------------------------- [純系]pure line すべての形質に関して同じセットの遺伝子を持つ すべての形質に関してホモ接合体(対立遺伝子が同じ)であること ex. (ム・ム)(白・白)(丸・丸)(シワ・シワ) 「代々花がムラサキのエンドウ」と書かれていたら、純系=(ム・ム)である 「代々丸い種子をつくるエンドウ」書かれていたら、純系=(シワ・シワ)である 純系同士((白・白))でかけあわせると、子・孫・曾孫もかならず純系になり((白・白))、代々同じ形質が表れる。 ----------------------------- ★メンデルの法則 ①[分離の法則]law of segregation ペアをなす遺伝子セット(2つの対立遺伝子)は、分離されて別々の配偶子(精子・卵)に受け継がれ、個々の配偶子はペアをなす遺伝子セットの一方しか受け取らない。 When any individual produces gametes, the two copies of a gene separate, so that each gamete receives only one copy. ※(A,A)と(a,a)の親からは、(A,A)や(a,a)は決して生まれない ※個体の持つ遺伝子セットは、必ず一方が父親から、もう一方が母親からである ②[独立の法則]law of independent assortment 対立遺伝子の配偶子への分配は、他の遺伝子対に関する遺伝子とは独立に行われる →エンドウマメのシワと色はそれぞれ独立に遺伝する 例外多数: 不完全優性(キンギョソウの花の色、馬の毛並み)